循環①~全身循環について~

循環
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新人
新人

循環かあ、あんまり得意じゃないなあ。

ぱいせん
ぱいせん

医療者の共通言語としても大事なところだから、少しずつでも勉強してみよう!

循環とは何か?

様々な定義づけがなされているところですが、ここでは簡単に「酸素と栄養素を各種臓器や末梢組織へ送ること」と定義してみます。

ここで言う代表的な栄養素はグルコースです。

グルコースは細胞内に取り込まれた後、ATP(アデノシン3リン酸)の合成に関与します。ATPは「生体のエネルギー通貨」と呼ばれ、生命活動に必要なエネルギーです。

循環はどうして重要なのか?

極端な例を考えてみます。心肺停止では酸素と栄養素の供給が途絶え、ATPの生成もストップします。その結果、体内の様々な組織が損傷を受けます。

特に酸素の消費量が多いとされる脳は心停止による損傷を受けやすく、仮に蘇生に成功したとしても意識が戻らないことは往々にしてあります。生命活動を保つうえで、循環は非常に重要なのです。

ここでグルコースの代謝式を見てみましょう。グルコースは複数の代謝過程を経て、最終的に水と二酸化炭素に代謝されます。この過程でATPの合成にも関わっています。

新人
新人

学校で習った!すっかり忘れてたけど。まさかここでまた出会うとは…

この式から分かることは、「酸素はグルコースの6倍必要」ということです。生体は血糖値を上げる手段をたくさん有しているので、特殊な疾患がない限り、グルコースが枯渇することはまず考えにくいです。

そのため、循環が成立するために最も必要なものはグルコースではなく酸素であると言えるでしょう。

下図に細胞内においてATPが産生される経路を示しています。

嫌気的条件の場合(酸素がない場合)、反応が途中までしか進むことができず、乳酸とわずかなATPしか生むことができません。循環不全の患者では乳酸アシドーシスを生じますが、これは末梢組織に酸素を届けることができないためといえます。

循環の流れ

循環の重要性が分かったところで、全身循環の図を以下に示します。

全身循環は静脈から返ってきた血液を肺へ送る「右心系」と、肺から返ってきた血液を全身臓器へ送る「左心系」に分けて考えるとイメージがしやすいです。(これは後に心不全の病態を考える際に活きてきます。)

左心系により全身臓器へ酸素が届けられているため、当然静脈は酸素が少ない状態となっています。右心系は肺へ血液を送り、肺を通じて新鮮な酸素を取り込むことで、動脈の血液は酸素が豊富となっています。これは一般にイメージされる呼吸ですね。このように、肺を通じて行う身体の外と行う呼吸を「外呼吸」と呼びます。

それに対して「内呼吸」は細胞内の呼吸です。実は一つ前の項目で説明したものが内呼吸に該当します。酸素を取り込んで、ATPを産生することが目的です。

循環は外呼吸と内呼吸をつなぐ架け橋であるとも言えます。

循環の3要素➀「心収縮力」

また、心臓には4つの部屋があり、右か左か、心房か心室かで区別されますが、最も重要なのは「左心室」です。

全身臓器へ酸素を届けることが循環と説明しましたが、それができるかどうかは左心室の機能に依るところが大きいためです。医療者の共通言語として、LVEF (Left Ventricular Ejection Fraction: 左室駆出率)という用語を覚えてください。これは左心室の収縮能を表しています。EFと略されて使用されることもあります。

イメージがしやすいように、下図をご覧ください。

心臓は絶えず収縮と拡張を繰り返しています。拡張期に100の大きさだった左心室が、収縮期に40まで変化したとすると、その変化割合は60%ですね。これがLVEFになります。通常50%以上が正常、40%以下の場合に収縮能低下とされます。

このLVEFは循環を構成する重要な3要素のうちの1つになります。薬剤の中にはLVEFに影響を及ぼすものもあるため、ぜひ覚えておいてくださいね。

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