出た、腎臓!用量調節なんかでよく使うからここは自信あるよ。
薬学管理では腎機能評価は重要だよね。でも本当に正しく評価できているかな?自分の評価の仕方を見直すために。この記事では腎臓の基本を学びなおしてみよう。
腎臓の機能
腎臓の機能は上図の通り多岐に渡ります。いずれも把握しておくことが大切ですが、薬学管理においては「腎臓は尿を作る臓器であり、腎排泄薬剤を排泄する」という事項が特に重要となります。
腎臓が尿を作るためには、心臓からの血流が必要です。心機能が正常な場合、心拍出量は1分あたり約5Lですが、そのうち20%の1Lが腎臓に流れていきます。つまり1日(=1440分)あたりでは、約1500Lもの血液が腎臓に流れているということです。
腎臓の最小単位はネフロンです。1つの腎臓にネフロンは100万個あります。上図の通り、ネフロン=糸球体+尿細管です。糸球体で血液を一旦濾過し、その後尿細管を流れる過程で必要なもののみ再吸収され、不要なものを尿として排泄しています。
この部分をもう少し掘り下げてみます。
輸入細動脈から入ってきた血液は、糸球体で一旦濾過されます。この中には必要なものも入ってしまっていますが、血流はものすごく速いので、この時点で必要なものと不要なものを選別している時間的余裕はありません。
一旦濾過しておいて、後にNaイオンや水分、ブドウ糖などの必要物質を輸出細動脈の方へ再吸収しています。
例えば、たくさんおもちゃが入ったおもちゃ箱から必要なものを探したいときに、皆さんはどうしますか?
おそらく、一度おもちゃ箱をひっくり返した方が探しやすいですよね。その後、目的のもの以外を戻していくと思います。腎臓も同じようなことをやっています。
先ほど1L/minの血液が腎臓へ流れると説明しました。このうち、実際に糸球体で濾過される血液量、すなわち原尿は1日何Lでしょうか?
糸球体濾過量(GFR)の正常値は100mL/minです。これを1日あたりに直すと144L/日、約150Lが原尿です。このように、自分に身近な検査値を関連付けておくとイメージがしやすいですね。
原尿は約150Lですが、約99%が再吸収されるため、実際の尿量は1.5L/日となります。
GFRを正確に測定:イヌリンクリアランス
腎排泄薬剤の評価に関わる際は、このGFRがどの様にして算出されているのかを知っておく必要があります。
GFRを正確に測定するためにはイヌリンを用います。イヌリンは糸球体で100%濾過され、かつ尿細管で分泌または再吸収されない物質です。そのため、イヌリンの挙動を追うことがそのままGFRの実測値に繋がります。
このようにイヌリンのクリアランスが腎機能の指標として最も正確であるのですが、イヌリンクリアランスの測定方法が非常に煩雑で、実際にイヌリンが使用されることはほとんどありません。
具体的なイヌリンクリアランスの測定プロトコルを示します。上図を参照してください。
2回の強制飲水があることや、2時間以上検査に要することなど、なかなかに面倒であることが分かります。そのため、腎移植前などの特殊な状況でなければイヌリンクリアランスを測定することはありません。
GFRを簡単に把握:クレアチニンクリアランス
ここで皆さんがご存じであろうクレアチニンが登場します。クレアチニンは筋肉の分解産物です。生体内に存在しますので、採血で評価することができます。
イヌリンとの比較を上図に示します。尿細管分泌を受ける点以外はイヌリンと同じです。この割合が糸球体の約20%とされていますので、GFR(イヌリンクリアランス)の正常値を100mL/minとするならば、クレアチニンクリアランスの正常値は120mL/minとなります。
測定が簡便であることから、通常はクレアチニンクリアランスを用いて腎排泄薬剤の投与量評価を行っています。
CockCroft-Gault式はどうやって作られた?
クレアチニンクリアランスの算出はCockcroft-Gault式を用います。この式はカナダの在郷軍人病院の男性患者249名のデータから作成されています。
女性が母集団に含まれていませんが、当時の疫学調査で女性のクレアチニン値が10-20%低値であったことから、女性の場合は更に0.85を掛けることとなっています。こちらの式は薬剤師にとっては馴染み深いかと思います。
この式が非常に有用であることは確かですが、機械的に数字を当てはめるだけでは上手くいかないことも多いです。以降、具体例を用いて詳しく説明していきます。
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