はじめまして、ちーのです。このサイトを立ち上げた背景をお話しします。
【本サイト設立の背景とビジョン】
薬剤師の仕事は対物業務から対人業務へ
2015年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」において、薬剤師は「対物業務」から「対人業務」へシフトすることが求められています。2019年には厚生労働省より「0402通知」が発出され、薬剤師が行っていた業務の一部を一定の条件下で非薬剤師が行えるようになりました。
驚くべきことに、大阪の某所には日本初の「ロボット薬局」があり、対物業務に薬剤師が関わることはほぼないと。ハード面、ソフト面の整備を含め、しばらくは過渡期が続くと思われますが、遅かれ早かれ対物業務に薬剤師が関わる時間は少なくなっていくでしょう。
対人業務ができない理由は「教育」にある
対人業務とは、「患者と向き合い、問題を解決すること」ですが、これは一朝一夕に出来るものではなありません。その理由の1つに、薬学部での教育があると私たちは考えています。6年間の薬学教育において、薬学生は医療現場で活かせる実践的な知識を学ぶ機会は十分とは言えません。
例えば、高学年になると薬学生は研究室へ配属され、卒業研究を行います。一部臨床研究を行っている研究室はありますが、多くの薬学生は細胞実験や動物実験に1日の大半を費やすことになります。それは平日に留まらず、週末も大学へ出向いて実験をこなすことも。
その研究成果は新薬の開発に注がれる一方、薬剤師に対しての恩恵はほとんどありません。というのも、薬剤師の戦場である医療現場は医学がベースであり、薬学と比較してマクロな視点が求められるからです。薬剤の作用メカニズムの解明に時間を費やしたところで、患者に対して薬剤の薬効・副作用モニタリングができるようにはななりません。
「薬剤師は科学をもって医療に貢献する素晴らしい職業である」。薬学部の教員はそういうものの、果たして現場の医師や看護師はそう思っているのでしょうか。
就職後は現場でゼロから経験を積むこととなりますが、有意義な指導を受けられるかどうかは個々の環境に依るところが大きいです。薬剤師は自己研鑽に対しての強制力もなければ、医師のように2年間の初期研修を義務付けられているわけでもありません。
結局は、自らが自発的に努力するしかないのです。しかし膨大な業務に追われて疲れ果て、何から手を付けて良いかわからず、最終的に投げ出したくなる。そんな苦しい状況に置かれている薬剤師は少なくくないのではないでしょうか。
「The first step is always the hardest.」
最初の一歩が最も難しいという英語のことわざです。実際何か新しいことを身につけようとした際、ゼロからイチへ進む過程が最も困難です。一方で、最初の困難さえ乗り切れば、あとはモチベーション次第でどんどん前へ進むことができるということでもあります。
ここでいうイチとは何か?「自発的に努力する姿勢が身についた段階」だと私たちは考えています。
この文章を読まれている方は研鑽のために情報収集し、サイトを見つけてくださったことかと思います。しかし、強制力のない卒後教育の場において、研鑽のモチベーションを保ち続けることは簡単ではないですよね。
それでも努力を続ける過程で分からないことが分かるようになり、自分にもできることがあると気づくと、医療が楽しく感じられるようになるはずです。
ワークライフバランスが叫ばれる中、闇雲に時間とお金を消費しても非効率です。筆者の経験を元に、最初に知っておくと役立つであろう汎用性の高い事項を共有してゆきたい。そして皆さんにとって学びを楽しいものにして、モチベーションの維持をサポートしたい。それが本サイト設立の背景です。
薬剤師に足りないもの
当然ですが、他職種に比べて薬剤師は薬のことを一番知っています。特に、薬理学・製剤学・薬物動態学などは、薬剤師ならではの武器である。ではなぜ現場で壁を感じているのでしょうか?1つの答えとして、他職種との共通言語が不足していると私たちは考えています。
例えば、β遮断薬が処方された患者へ服薬指導を行ったとします。「副作用でめまいがふらつきを感じることがあります。もしそのような症状が現れた際は、スタッフに相談してください」。実際に服用後にめまいやふらつきがすると相談を受けた場合、その症状が本当にβ遮断薬の副作用かどうかを評価する必要がある。具体的なアプローチとしては、①薬剤が原因である可能性、②薬剤以外が原因である可能性を天秤にかけつつ、薬理学や薬物動態学、病態生理の知識を組み合わせながら評価を行うこととなります。
しかしながら、多くの薬剤師には病態生理の知識が欠けているために、充分な評価を行うことができないのです。結局は伝書鳩のように他職種へ報告し、最終的には医師任せになってしまいます。もちろん薬剤師単独で判断ができるわけではないですが、薬剤師も自分なりの意見を持ったうえでチームに参加し、多職種で意見の摺り合わせを行いつつ結論を出していく必要があります。
この際に必要なのが、多職種との間の共通言語です。具体的には解剖学、病態生理学、症候学などが挙げられます。他にもバイタルサイン、フィジカル、心電図、エコー、画像所見、採血結果などを理解し、必要に応じて引き出しから出せるようにしておくといいでしょう。
そうすることで、薬剤と副作用を1対1で結びつけるのではなく、総合的な視点で薬物療法を評価することができるようになります。知的好奇心が満たされ、また努力に基づいた成功体験を積むことで、薬剤師の仕事が少しでも楽しく感じられるようになると思われます。
そこまで到達するまでに、膨大な時間と努力が必要であるが、医師をはじめとした他職種は日々医療の為に努力しています。このままでは医療の蚊帳の外になり得ると、薬剤師は危機感を持つべきです。
あくまで薬剤師は薬の専門家であり、医薬品の適正使用が目的です。共通言語を学ぶ際は、他職種との線引きを理解しつつ、薬物療法にどう活かせるか?を常に自問自答しながら学ぶことが望まれます。本サイトでは、薬剤師としての最終的なアウトプットを意識して教育を行います。
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