浮腫のきほんのき

浮腫
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浮腫の原因は様々あります。心不全などが有名かもしれませんが、実際は便秘や薬剤の副作用などでも起こります。色々な視点から浮腫の病態を評価できるようになると良いですね。本記事では浮腫(むくみ)の概略について説明します。

浮腫とは何か?

はじめに、浮腫とは何でしょうか?

浮腫は「間質の水分貯留」と定義されます。

輸液の記事でも説明しましたが、人体の水分は体重の60%です。水分はさらに血管内:間質:細胞内液=1:3:8の比率で分布します。

細胞外液の一部分である間質に水分が貯留することで、浮腫を来します。

参考までに、間質の広さのイメージです。

小腸の表面積はテニスコート1面分に相当するとよくいわれますが、例えば体重60kgの人の間質の容積は約9Lで、薄く広げるとサッカーコート1面分に相当するとされています。

それだけ広大な面積を誇る間質が、我々の身体に凝縮されて詰まっています。

浮腫の原因は血管内から間質へ水分が漏れることによります。

血液は心臓から出て各臓器をまわって心臓へ戻ります。これを「全身循環 (体循環)」と呼びます。その過程で、動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈と通過する血管は変わります。

具体的にどの血管から水分が漏れるかはご存知でしょうか?

どの血管から水分が漏れるのか?

正解は「毛細血管」です。動脈や静脈は3層構造であり、ここから水が漏れることはありません。

「水分が間質へ漏れ出るのは毛細血管からのみ」、ということを覚えておきましょう。

では、毛細血管ではどのようにして水分が漏れているのでしょうか。

上図を参照してください。毛細血管内には大きく分けて2つのベクトルが存在します。

1つは「静水圧」と呼ばれ、毛細血管→間質へ水が漏れる方向の力になります。静水圧が強いほど、浮腫が出やすいということですね。

もう1つは「膠質浸透圧」と呼ばれ、静水圧とは逆に間質→毛細血管へ水が移動する力になります。膠質浸透圧は血管内に水を留める力であり、膠質浸透圧が高いほど浮腫が生じにくいです。

血液中のアルブミンという蛋白が膠質浸透圧を担っています。静水圧と膠質浸透圧のバランスにより、間質の水分が主に規定されます。

もう少しここのところを掘り下げてみます。

間質と毛細血管の間で水分はどう動く?

血流は細動脈→毛細血管→細静脈へと流れてゆきます (上図では左から右へ)。

静水圧は動脈→静脈へ流れるにつれて低下します。水が間質へ漏れ、毛細血管内の水が少なくなるためです。

膠質浸透圧は動脈→静脈へ向かうにつれて上昇していきます。血管内の水が間質へ漏れていくことで、血管内のアルブミンが濃縮される(濃度が上昇する)ためです。

上図をもとに順番に確認しましょう。

①細動脈付近

静水圧>膠質浸透圧 差分だけ水分が毛細血管から間質へ漏れていきます。

②中央地点

静水圧と膠質浸透圧が等しくなるため、水分の移動はありません。

③細静脈付近

膠質浸透圧>静水圧 差分だけ水分が間質から毛細血管へ漏れていきます。

このように、水分は毛細血管から間質へ漏れ、しばらく間質を移動したのちにまた毛細血管へ戻ってきます。この小さな循環を「微小循環」と呼びますので覚えておきましょう。

また、間質にはリンパ管が存在し、漏れた水分を回収して静脈へ戻す役割を担っています。

少し細かい話になりましたが、以上が全体像になります。

具体的な観察方法については以降の記事で解説していきます。

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