本記事は心電図編の導入です。
まず結論として、薬剤師は心電図を学んでおくべきと考えます。
更にいえば、薬剤師に限らず全医療従事者が学ぶべき内容とまでいえます。
なぜ薬剤師は心電図を学ぶべきか?
薬剤師は心電図の情報をどのように活用すべきでしょうか。
当然医師ではないため、疾病の診断が目的ではありません。
薬剤師の使命は「医薬品の適正使用および医療安全の確保」にあります。
具体的にいえば、患者の病態を正しく把握すること、その上で薬が効いているのか、副作用が出ていないかどうかの評価が必要です。
薬剤師が患者の薬物治療について評価を行う際に、まず情報が必要です。
情報源として、フィジカル、心電図、画像、検査値などが挙げられます。
この際、侵襲性の低い検査から行っていくことが原則です。上図でいうと左から右へ順番に情報を集めていきます。
私見を大いに含みますが、薬剤師はこれらの情報を充分に活かし切れていないと感じています。ベッドサイドでは患者への問診、カルテ上では検査値にフォーカスしがちではないでしょうか。
ある意味仕方ない部分もあります。一部の大学ではフィジカルアセスメントの実習も取り入れているようですが、心電図や画像の見方などを実践レベルまで学ぶことがなく、また薬剤師として就職した後も体系的に学ぶ機会に恵まれていないのが現状です。
しかしながら、看護師はベッドサイドでのフィジカルの評価に長けており、循環器病棟や救急・集中治療においては心電図の判読を通じて循環管理を行っています。
医師はもちろん全ての情報をみたうえで治療方針の検討をしています。
問診と検査値しかみれない薬剤師にとって、これは非常に勿体ない状況だと思います。
活用できる情報は何でも利用して、薬物療法に活かすべきです。
上図はイメージです。
活用できる情報が増えていくほど、視界がどんどん開けていくと感じています。
本ブログにおいて、多職種間の共通言語が重要であると幾度も強調しています。
心電図はその中の一つです。
心電図だけ知っていればよいわけではもちろんありませんが、心電図を学んでいることは自らのアセスメントレベルを一段階上げてくれると感じています。
心電図とはなにか
心電図=電気信号です。
何が言いたいかというと、生体内で起こる反応の中で最も速いということです。循環器系の異常が起こる前には、必ず心電図変化が生じています。
従って、心電図波形は異常の早期発見、早期治療に有用です。
上図は正常な波形を示しています。左から、P波、QRS波、T波…と電気信号が流れていきます。
横軸は時間ですので、横幅の長さは各波形が流れた時間と同義です。
一般的なルールとして、1mm=0.04秒のスケールで表されています。
横幅が長いほど、電気が伝わる時間が遅く、逆に横幅が狭いほど電気の伝導が速いのだと解釈してください。
例えば、QRS波の幅は心室へ電気が流れる時間を表しています。通常は0.06-0.10秒くらいで伝わるとされており、非常に速く伝わることが分かります。
心肺停止時の心電図波形
心電図が必須である具体的な場面として、急変対応があります。
心肺停止時の心電図波形は大きく分けて以下の4種類です。
心電図波形に基づく心肺蘇生時の薬剤投与戦略
結論から述べると、心電図波形によって使用薬剤および投与タイミングが異なります。
VF(心室細動)とPulseless VT(無脈性心室頻拍)は不整脈が原因ですので、まずは電気的除細動を行います。それでもVFあるいはPulseless VTが持続する場合、アドレナリンを1mg投与します。アドレナリンは強力なβ作用を有し、不整脈を逆に惹起する可能性があるため、最初から投与することは推奨されていません。
Asystole(心静止)とPEA(Pulseless Electrical Activity; 無脈性電気活動)は原因となる疾患が多いのですが、少なくとも不整脈が原因ではありません。
そのため、これらの2波形については、可能な限り速やかにルートを確保し、アドレナリンを1mg投与することが推奨されています。
このように、アドレナリンを投与するタイミングが各波形により異なることが分かります。
これだけでも、心電図が見れないと適切な対応ができないということが分かります。
心電図の具体的な判読について、詳しくは以降の記事で解説していきます。
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