本記事からは、具体的な心電図の波形について説明していきます。
心電図異常に気が付くためには正常な波形を知っていることが必要です。
まずは、正常な波形の成り立ちについて理解しましょう。
基本の心電図波形
左から順に、P波→QRS波→T波と続きます。
縦軸は起電力の大きさ(単位:mV)、横軸は時間(1mmあたり0.04秒)を示します。
ちなみに、アルファベットに深い意味はありません。
順番になぞるならP波ではなくA波で良かったのでは?と思うかもしれませんが、他分野においてABCD~はよく使われていたため、PQRS~にしたようです。また、PはPrimary(最初の)を表すという説もあります(どちらも真偽は定かではありません)。
話が逸れましたが、改めてP波,QRS波,T波は心臓にとってそれぞれ何を意味するのでしょうか。
それぞれの波が意味するものは?
結論は↑になります。
P波は心房の脱分極、QRS波は心室の脱分極、T波は心室の再分極を表します。
難しい言葉が出てきましたが、ざっくりいうと脱分極は「心臓が興奮する」イメージです。脱分極(興奮)すると、心臓は収縮します。
再分極は脱分極(興奮)した心臓が再度分極するということで、「興奮から醒める」イメージです。再分極すると心臓は拡張します。
一つ注意点として、心臓の収縮・拡張は物理運動であって、電気信号ではありません。
例えばP波=心房の収縮です、というのは間違っています。あくまでP波は心房の脱分極を表す電気信号であって、物理運動ではないからです。細かいことではありますが、言い方ひとつで印象は変わります。頭の片隅に入れておいてください。
ここまでをまとめると↑になります。
ちなみに心房の再分極はないのか?と疑問に思われるかもしれませんが、QRS波に隠れて見えないとされています。この点は気にしなくて大丈夫です。
(脱分極、再分極の仕組みについては少し複雑ですので、別記事でまとめます。)
直線のPQ間隔は何を表している?
ここで注目したいのがPQ間隔です。上図を参照してください。心房の脱分極を表すP波と心室の脱分極を表すQRS波の間に存在するPQ間隔は、実は房室結節の脱分極を表しています。基線上にあるのでスルーされがちですが、薬剤が影響する箇所でもありますので、頭の片隅に入れておいてください。
ここまで説明してきた正常な波形を洞調律と呼びます。
洞結節で発生した電気信号が正しく心房➔房室結節➔心室へ伝わり、P波➔QRS波➔T波が規則正しく表れ、かつ再現性を持って繰り返されている状態です。
次回の記事ではさらに正常洞調律波形について掘り下げて、
・波形が上向き、下向きになる理由
・波形の大きさの違い
について解説していきます。
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