薬疹はどんな見た目をしているの?

臨床推論
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「薬を飲み始めたらブツブツが出たんだけど、どうすればよいですか?」こういった相談を受けて、困ったことがある方は多いと思います。

日常臨床で遭遇する皮疹について、薬が原因かどうか評価できることは重要です。そのために知っておくべき知識について、基本的なところから整理していきましょう。

本記事では、「薬疹はどんな見た目をしているのか」に重点を置いて説明します。

よくある薬疹の見た目

まず、薬疹は「紅斑」として出現することがほとんどです。

「紅斑」とは何か説明できますか?

「斑(はん)」とは、表面が盛り上がらない平らな発疹のことをいいます。

教科書的には色により紅斑、紫斑、色素斑、白斑がありますが、臨床では紅斑が最も頻度が高いです。薬剤性の皮疹も紅斑として現れることが多いですので、まずは紅斑について押さえておきましょう。

ちなみに、紅斑と紫斑は見た目が似ており見分けがつかないことが多いです。

紅斑は血流増加(血管拡張)が原因であり、表面を押すと血管が潰れるため消失します。

紫斑は出血が原因で、血管外に漏れ出た赤血球をみています。そのため、押しても消えることはありません。

従って、紅斑か紫斑かどうかは押して消えるかどうかを確認することで判別が可能です。

ここまで紅斑とは何かについて説明しました。

では、以下の3つの紅斑のうち、薬剤性が疑われるものはどれでしょうか?

結論からいうと、薬疹は「表面がツルツル、境界明瞭」パターンが正解です。

表面がザラザラとは、皮が剥けてザラザラしている状態です。表面に変化がなくツルツルしている状態と区別して考えます。

境界とは、赤みがでている部位と正常部位との境界のことで、はっきり区別できれば境界明瞭、よく分からない場合は境界不明瞭として考えます。

皮膚の構造と異常時の所見

この理解のためには、皮膚の構造をおさえておく必要があります。

皮膚は3層構造で、体表面から表皮→真皮→皮下組織と続きます。

表皮は外界からのバリア機能を果たします。血管は存在しません。真皮には毛細血管が走っており、表皮に栄養を与えています。

皮下組織は刺激を和らげる脂肪組織が主体です。また体循環の動静脈も走行しており、真皮へ毛細血管が走っています。

では各部位に異常が生じると、皮膚所見はどうなるか考えてみましょう。

表皮に病変がある場合

表皮に病変がある場合、「表面ザラザラ、境界明瞭」の紅斑が出現します。

表面がザラザラとは、医学的には「鱗屑(りんせつ)」があるといいます。表皮が剥がれて白く浮いている状態です。正常部位との境界が明瞭であるのは、体表面から近いという単純な理由です。

表皮の病変は「外因性」であることがほとんどです。理由は表皮には毛細血管が存在しないため、内因性の原因物質は到達しづらいためです。

真皮に病変がある場合

次に、真皮に病変が生じた場合について考えてみます。

この場合、「表面がツルツル、境界明瞭」な紅斑が出現します。表皮の病変ではないため、表面は白く剥がれることはなくツルツルです。

真皮はまだ表面から近い距離にあるため、正常/異常部位の境界は明瞭です。

原因の多くは「内因性」で、体循環に乗って真皮までやってきた異物が炎症を起こします。炎症により毛細血管が拡張し、表面に赤みが生じます。

薬剤性もこのパターンで、基本的に薬疹では真皮に病変が生じています。

ここまでをまとめると、上図のようになります。

表皮に病変があれば表面がザラザラになり、表皮以外の病変では表面はツルツルです。表皮は外因性、真皮は内因性の原因であることがほとんどです。

どちらも表面が近いため、正常/異常部位の境界は明瞭となります。

皮下組織に病変がある場合

では、皮下組織の病変では皮膚所見はどうなるでしょうか?

正解は上図です。

真皮と同じく、表皮の病変ではないため表面はツルツルです。

皮下組織は表面から遠い距離にあるため、正常部位と異常部位の境界が不明瞭となります。

まとめ

改めて冒頭の質問に戻ります。

薬疹は多くの場合、真皮に病変を生じるために「表面ツルツル、境界明瞭」の紅斑を生じます。

薬疹を評価するにあたり、他にも知っておくべきことはたくさんあるのですが、まずは薬疹がどのような見た目をしているのかをおさえておきましょう。

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