心臓からの血流が低下したとき、皮膚や消化管への血流を切り捨てても脳や腎臓への血流が優先される、「血流の再分配」が起こります。
この記事では皮膚と消化管への血流が制限される機序について掘り下げつつ、カテコールアミンの働きについて理解を深めてみたいと思います。
血流の再分配にはどんな機序が関与しているのか?
結論から述べると、血流の再分配には自律神経が大きく関与しています。
自律神経は交感神経と副交感神経からなります。
日中活動時は交感神経優位、夜間休んでいるときは副交感神経優位です。両者はシーソーのような関係にあり、片方が活性化しているときはもう片方は抑制されています。両方ともに活性化されることはありません。
交感神経の神経伝達物質はアドレナリンに代表されるカテコールアミンです。活動時は酸素を多く必要としますので、気管支は拡張して多くの酸素を取り入れ、心機能は亢進します。多くの情報を外から取り入れる必要がありますので、瞳孔は散大します。
総じて、呼吸器系・循環器系が活性化されます。
一方、副交感神経は食事をして休んでいるときに活性化されます。神経伝達物質はアセチルコリンです。食べたものの消化が必要ですので、腸管運動は亢進します。また便意や尿意を催します。総じて消化・泌尿器が活性化されます。
休んでいるときに酸素は多く必要としませんので、心機能は抑制され、気管支も収縮、瞳孔も縮瞳します。夜間に気管支喘息の発作が多い理由は副交感神経優位となって気管支が収縮するからと考えると理屈が通っています。
まとめたものがこちらになります。対比してイメージしておけば暗記する必要はありません。
循環不全時はどちらの神経が活性化されるでしょうか?
生命の危機ですので、多くの酸素が必要です。そのため、当然ながら交感神経優位になります。カテコールアミンが放出されてα,β受容体が刺激され、呼吸・循環器系が活性化されます。
受容体の局在と作用は以下になります。
ここでポイントとなるのが、このα受容体は全身の血管に均等に分布しているわけではないという事です。
α受容体は皮膚や消化管につながる血管へ多く分布しています。循環動態が悪化した際、よりα受容体の多い皮膚や消化管で血管の収縮が顕著に起こり、血流が制限されることが説明できます。また生命直結性の最も高い脳の血管にはα受容体は存在しません。このことも血流の再分配に有利です。
このように考えると、カテコールアミンは必ずしもすべての臓器に恩恵があるわけではないということが分かります。
アドレナリンやノルアドレナリンは昇圧作用を期待して使用しますが、α受容体を刺激することはあくまで脳や腎臓などの重要臓器への血流を維持することが目的です。その代償として皮膚や消化管への血流が犠牲になっているという事実を踏まえておく必要があるでしょう。
タイトルの通り、カテコールアミンは功罪を持ち合わせているというイメージを持ってください。
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