Ca拮抗薬の種類と使い分けは?

循環
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新人
新人

Ca拮抗薬ってアムロジピンとかベニジピンとかだから血圧の薬だよね。でも抗不整脈の分類にもCaチャネル遮断ってあるよね?

ぱいせん
ぱいせん

そうだね。同じCa拮抗薬でも成分によって薬効が違うんだ。今日はCa拮抗薬の分類と特徴を見ていこう。

Ca拮抗薬の分類と特徴

Ca拮抗薬はジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に分けられます。ジヒドロピリジン系は降圧作用が強く、非ジヒドロピリジン系は抗不整脈作用が強いという特徴があります。

ジヒドロピリジン系の特徴

血圧を下げることを目的にする場合は、ジヒドロピリジン系を使用します。

〇〇ジピンと名が付くもので、基本的に「血管のみ」に作用し、血圧を低下させます。また、血管は動脈と静脈に大別されますが、Ca拮抗薬は主に動脈に作用します。

Ca拮抗薬が動脈に作用する理由を理解するために、まず動脈と静脈の違いを踏まえておく必要があります。

静脈は「容量血管」と呼ばれ、全血液量の70-80%を貯蔵しています。また筋層が薄い(=血管平滑筋が少ない)ことがポイントです。動脈は「抵抗血管」と呼ばれ、血管平滑筋が豊富に存在し、血管抵抗を生み出すことで血圧を調節しています。

重要なのは、Ca拮抗薬の作用部位であるCaチャネルは「血管平滑筋」に存在しますので、静脈には作用部位は少なく、動脈には多いということになります。

従って、Ca拮抗薬は「動脈拡張薬」と表現することができます。動脈を拡張することで血管抵抗を下げ、安定した降圧作用を得ることができます。更に特徴を挙げるならば、この「安定した降圧作用」という点がジヒドロピリジン系Ca拮抗薬のメリットの1つです。

例えば、他に降圧薬として用いられるARB/ACE阻害薬は循環血液量によって降圧作用が変動するとされています。塩分摂取量が多いと循環血液量が増加するため、降圧作用が減弱してしまいます。また摂食低下や感染症による血管内脱水の状態では、降圧作用が増強します。

例えば災害の現場においては、このどちらの状況にも陥りやすいといえます (災害食は塩分が多く、また食事が手に入らないことも想定されるため)。そのため、降圧作用の変動し易いRAS阻害薬ではなく、降圧作用の安定したCa拮抗薬が推奨されています。

基礎疾患により降圧薬の選択は変わりますが、Ca拮抗薬の降圧作用は塩分摂取量に依存しないため、効果が安定しているということは1つのメリットであるといえます。

副作用の「浮腫」はどうして起こる?

Ca拮抗薬使用時には、副作用の「浮腫」が起こりやすくなります。Ca拮抗薬の動脈への選択性が高いことによって起こるものです。

動脈への選択性が高いとなぜ浮腫が起こるのでしょうか。

基本的に血流は圧の高い方から低い方へ移動していきます。動脈側と静脈側の圧の差が血流を生んでいるわけです。また、中心の毛細血管は間質と接しています。

浮腫とは間質の水分貯留と定義されるのでした。

Ca拮抗薬を使用すると動脈が選択的に拡張し、平均血圧が低下します。

すると動脈と静脈の圧の差が小さくなり、中心の毛細血管で血流が停滞することになります。停滞した血液により毛細血管内の圧が高まり、間質へ水が漏れることにより浮腫が生じます。

このように作用機序と薬効、副作用を結び付けておくことで、より特徴が理解しやすいのではないでしょうか。

非ジヒドロピリジン系の特徴

非ジヒドロピリジン系は「心臓のCaチャネル」に選択性を有し、心拍数を低下させる作用があります。なぜ心拍数を下げるのかを少し掘り下げてみます。

心臓が収縮するためには、刺激伝導系からの電気信号が心室まで伝わる必要があります。刺激伝導系は洞結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維から成ります。

これらはそれぞれ電気信号を作る能力(=自動能)を有していますが、洞結節が電気信号を作るスピードが最も速いため、通常は洞結節が全体の調律を担っています。これを洞調律と呼びます。

ところで、洞結節、房室結節の活動電位は細胞内へのCaイオンの流入から始まります。

野田コメント:心筋(心房筋、心室筋)ではありません。これらはNaイオンの流入から始まります。「心筋細胞内への」→「細胞内への」としてはいかがでしょうか。

つまり非ジヒドロピリジン系薬剤は刺激伝導系の活動電位の興奮を抑制することで、心拍数を低下させることができます。

この記事では詳細には述べませんが、刺激伝導系の活動電位の立ち上がりをCaチャネルが担っていることは不整脈の薬物治療を考える際にも重要ですので、覚えておきましょう。

具体的な薬剤に触れます。非ジヒドロピリジン系の代表的な薬剤はベラパミルとジルチアゼムです。ベラパミルは血管へは作用せず、心臓のみに作用するため、降圧薬ではなく抗不整脈薬として使用されます。

ジルチアゼムはジヒドロピリジン系とベラパミルの中間的な位置づけにあり、血管と心臓の両方に作用するため、降圧と心拍数低下作用が得られます。

注意点として、非ジヒドロピリジン系は心抑制作用があります。心収縮力の低下した患者には禁忌です。LVEF<40%では使用を避けた方がよいでしょう。

CaチャネルのL型・T型・N型。選択性の違いによって薬効に変化はあるのか?

ここまでCa拮抗薬を「ジヒドロピリジン系」と「非ジヒドロピリジン系」に分けて説明しました。

一方で、薬理学の教科書にはCaチャネルをL型・N型・T型へ分類しています。どのチャネルを阻害するかで、副次的な効果が異なるとされています。

チャネルの局在は下表になります。

血管平滑筋、心筋L型
交感神経終末N型
心臓の洞結節・房室結節T型
腎輸入細動脈L型・N型・T型
腎輸出細動脈N型・T型

巷で言われていることとして、L型だけでなくN型・T型を阻害する事で以下のメリットがあるとされています。

  • 腎輸出細動脈の収縮を抑え、糸球体内圧を下げ腎保護作用が期待できる
  • 下肢浮腫を軽減できる

具体的にどのCa拮抗薬がどのチャネルに選択性を有するかは割愛させていただきます。というのも、これらのメリット(?)にエビデンスは乏しいためです。

腎保護作用を期待するならばARBやACE阻害薬に確固たるエビデンスがあるため、Ca拮抗薬ではなくRAS阻害薬を選ぶべきです。また下肢浮腫を軽減できたとの症例報告は存在しますが、投与しなかった場合と比較しているわけではありません。

個人的な私見になりますが、少なくとも急性期治療において、これらのチャネルの選択性を考慮する必要はないと考えます、慢性期でCa拮抗薬の選択を考える際には参考の1つとしても良いかもしれませんが、現時点で積極的に進めるだけの根拠はないと言わざるを得ません。

今後のエビデンスの創出が期待されるところです。

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