循環④~循環の3要素/心収縮力について~

循環
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今回の記事では循環の3要素のうち、心収縮力について説明します。

心収縮力の指標、LVEF(左室駆出率)

左心室の収縮能を表すLVEF (Left Ventricular Ejection Fraction: 左室駆出率)が一般的な指標として用いられます。よくEF、と省略して呼ばれます。

ポンプのようなイメージを持ってください。

例えば拡張期に100の大きさだった左心室が、収縮期に40まで変化したとすると、その変化割合は60%ですね。これがLVEFになります。通常50%以上が正常、40%以下の場合に収縮能低下とされます。

収縮力を高める薬、低くする薬

薬剤の中には心ポンプ機能へ影響を及ぼすものもあります。

β1作動薬は心臓のβ1受容体に作用することで心収縮力を増強させます。他にもPDEⅢ(ホスホジエステラーゼⅢ)阻害薬や、ジギタリス製剤も強心作用を有しています。これらが用いられる場面は手術室や集中治療室がメインかと思います。

反対に、心収縮力を低下させる薬剤も存在します。後負荷の記事でも説明しましたが、非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬であるジルチアゼムなどです。これは頻用される薬剤ですし、循環器内科以外の診療科で継続処方される場合もあるため、使用患者の心機能に注意を払っておく必要があるでしょう。

一方で、抗不整脈薬については循環器内科以外ではあまり目にすることがないかもしれません。

シシリアン-ガンビット分類というものをご存じでしょうか。抗菌薬でいうところのアンチバイオグラムのようなもので、抗不整脈の薬理作用を詳細に表しています。

(2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドラインより引用)

この分類の中には、左室機能という項目があります。例えば一番下のジゴキシンは「↑」と記載されています。強心薬ですので、左室機能を強めるという意味です。

一方で、他の薬剤を見てみると、多くの薬剤で「↓」と記載されており、左室機能を低下させることが読み取れます。収縮機能の低下した(LVEF<40%)心不全においては、これらの薬剤は心機能を更に低下させるために、使用は禁忌です。

心収縮力が低下するとFrank-Starling曲線は?

前負荷の記事で説明したFrank-Starling曲線について、EFを変化させると上図のようになります。EFが低いと脱水で容易に心拍出量が低下し、逆に溢水で容易にうっ血を来します。安全域が狭くなっているのが分かるでしょうか。

Frank-Starling曲線の説明はこちら↑

というわけで、循環の3要素について説明しました。これらは1回拍出量を規定し、血圧を構成する重要な要素です。ややこしいところですが、少しでも理解の助けになれば幸いです。

新人
新人

難しかったけど前よりも少し循環にとっつきやすくなったかも。副作用を発見するためにも大事だね。

著者【の】
著者【の】

いいっすね~

次回以降は血圧について掘り下げていきたいと思います。

コメント

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