症例検討×浮腫

副作用フォロー
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本記事では、模擬症例を通じて具体的な浮腫の評価方法を説明します。

症例提示

70代女性、既往歴は高血圧で、アムロジピン5mgを内服されています。

昨日、糖尿病で教育入院されました。50歳時に2型糖尿病を発症されています。

労作時の呼吸苦などはなく、体調は問題ないようですが、足が重いことと慢性的な便秘を訴えられています。HbA1cは8.2%、身長150cm, 体重68kgと肥満体型です。

両側下腿~足背にかけて圧痕性のSlow edemaを認めます。

また、内果(くるぶしの内側)の表在静脈の拡張も併せて認めています。

アルブミン値は3.7g/dLと問題はありません。

最近はほとんど運動せず味の濃いものが好きで、体重は増加傾向であったようです。

この方の浮腫の原因と対策について考えてみましょう。

以下の記事を必要時参照してください。

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浮腫の性状に注目して原因を考えてみる

まず、浮腫の性状に注目して原因を考えてみましょう。

この方は、両側下腿~足背にかけて圧痕性のSlow edemaを認めています。

下図を参照してください。

圧痕性のSlow edemaは②または③に該当していますが、③の血管透過性亢進は当てはまらなさそうですね。

②はいかがでしょうか。

労作時の呼吸苦はなく、とくに心不全・腎不全の指摘はありません。

深部静脈血栓などは検索してもよさそうでしょうか。

また薬剤面では、Ca拮抗薬の関与はありうるかもしれません。

またこの分類には注意点がありました。

これを報告した元論文の対象患者は全て浮腫を発症して3ヶ月以内です。

慢性的な浮腫を呈している場合、Rapid edemaはSlow edemaへ変化することに注意が必要です。

本症例の浮腫はいつから認められているのか分かりませんので、Rapid edemaの原因にも目を向けておく必要があります。

肝硬変・低栄養・ネフローゼ症候群などは認められず、そもそも低アルブミン血症ではありませんので、これらも除外できます。

すると赤文字で示した静脈閉塞/圧迫、および薬剤性(Ca拮抗薬)が残りました。

本当にこれだけで良いでしょうか?

他にも考えることがあるのではないか?と思われたなら正解です。

動脈・静脈の性質からも浮腫の原因を考えてみる

ここまでは毛細血管~間質のみに注目していました。もちろん重要ですが、動脈・静脈側にも注目することで、より広い視野を持って浮腫を捉えることができるのでしたね。

動脈側では、細動脈→毛細血管への血流を制限している前毛細血管括約筋の働きが重要で、これは交感神経支配によるものでした。

上述の疾患や、Ca拮抗薬は前毛細血管括約筋の収縮を低下させることで、多量の血流が毛細血管内に流入し、静水圧を上昇させてしまう可能性があります。

今回の症例に戻ります。本症例は70代とご高齢であること、2型糖尿病の罹患期間が長く、コントロールも不良であることから糖尿病性神経障害を合併している可能性があります。また、アムロジピンを内服しています。これら赤字で示した箇所は動脈側に影響する要因です。

次に、静脈側にも注目してみましょう。

静脈の血流は乏しいため、周囲の筋肉の収縮と逆流防止の弁が末梢→中枢へ向かう血流を形成するのでした。上述の事項は、静脈の血流を停滞させ、ひいては毛細血管内圧(静水圧)を上昇させる原因となりえます。

再度本症例に戻ります。もうお分かりかと思いますが、青文字で示した箇所は静脈側の要因です。

運動習慣はなく、筋力低下がうかがわれます。また内果の表在静脈の拡張は弁の機能低下を示唆します。便秘・肥満は腹腔内圧を上昇させ、静脈うっ滞の原因となります。

浮腫の原因がたくさん考えられそうですね。

細胞外液量も考慮する

また、この方の嗜好として味の濃いものが好きとありました。

Naの摂取量が多いと細胞外液量が増加し、ひいては間質の浮腫につながります。

改めて振り返ると、浮腫は「間質の水分貯留」と定義されますが、この水分は正確には「塩水」です。

患者に「このむくみは水ではなく、塩水ですよ」と伝えると、少しは塩分を控えてくれるかもしれません。

まとめ~浮腫の原因と対策は?

浮腫の原因と、短期的/長期的な対策についてまとめました。

こちらが問題に対する回答例になります。

薬剤だけでなく、病態や生活も含めた総合的な評価が求められます。

今までの記事も参考にしつつ、臨床でアウトプットできるよう整理してください。

新人
新人

考えられる原因が沢山あるんだね。浮腫が出た時にCa拮抗薬の副作用だ!ってすぐ飛びつかないように気を付けないとなぁ。。

コメント

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