浮腫の性状から原因を考えてみよう

浮腫
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本記事では浮腫の原因の評価について説明していきます。

浮腫の原因はどうやって評価する?

浮腫を観察する際は、前脛骨部を自分の爪の色が白くなる程度の強さで、約10秒圧迫します。その後の観察項目としては、以下を観察します。

  • 圧痕が残るか?
  • 圧痕が残る場合は、元の状態に戻るまでに40秒かかるか?

浮腫の原因も含めてフローチャートにすると以下になります。

圧痕が残らない場合は非圧痕性浮腫(non-pitting edema)と呼ばれ、甲状腺機能低下やリンパ浮腫が原因と報告されています。

圧痕が残る場合を圧痕性浮腫(pitting edema)と呼び、さらに圧痕が40秒以内に元に戻る場合をRapid edema、40秒以上かかる場合をSlow edemaと呼びます。

Rapid edemaの原因は低アルブミン血症、Slow edemaの原因は心不全・腎不全・薬剤性などが代表的です。表にまとめたものが以下になります。

浮腫の4つの機序

浮腫の原因は①~④に大別されます。順番に確認していきましょう。

➀膠質浸透圧低下

アルブミンは膠質浸透圧を担い、水分を血管内に留める役割を果たしています。

低栄養などで血中のアルブミン濃度が低下すると膠質浸透圧が低下し、

間質→毛細血管へのベクトルが小さくなることで浮腫を来します。

②静水圧上昇

様々な要因により血管内の水分量が増加することで静水圧が上昇し、毛細血管→間質のベクトルが大きくなることで浮腫を来します。

③血管透過性亢進

血管の内側には血管内皮細胞が密に並んでおり、通常水が漏れるような隙間はありません。

しかし炎症反応が起きると毛細血管の血管内皮細胞が収縮し、細胞と細胞の隙間が広がってしまうことで、水分が血管外へ漏出します。これを血管透過性の亢進と呼びます。

④間質浸透圧上昇/リンパ灌流不全

甲状腺機能低下症では間質にムコタンパクが貯留し、間質の浸透圧を上昇させることで浮腫の要因となります。指で押してもへこまない非圧痕性の浮腫を来すとされています。

また手術でリンパ節を切除している場合、リンパ管の通過障害を来すため、間質から水分の回収が進まず、浮腫の要因となります。

頻度の差はありますが、まず①~④の機序を理解しておきましょう。

実臨床で多いのはSlow edema

表では膠質浸透圧低下による圧痕性浮腫はRapid edemaとして現れると記載されていますが、実臨床においてはSlow edemaとして現れることも多いです。

報告元の論文を参照すると、どうやら対象となった患者は浮腫を発症して3か月以内となっています。

浮腫がある程度慢性化すると、間質に沈着物が生じて圧痕が回復するのが遅くなっていき、Rapid edemaは次第にSlow edemaへと変化するようです。

上図のRapid edemaの原因をみると、肝硬変・低栄養・ネフローゼ症候群となっています。肝硬変や低栄養は慢性的な経過の中で低アルブミン血症を来すため、既にSlow edemaへ変化した後の浮腫を見ることが多く、Rapid edemaを観察できることは少ないと考えられます。

一方で、ネフローゼ症候群の場合は腎糸球体の障害により本来濾過されないはずのタンパクが濾過されてしまい、急性の経過で低アルブミン血症を来しますので、Rapid edemaとして観察できることが多いかと予想されます。

ただ、施設にもよりますが、ネフローゼ症候群自体に遭遇する頻度はあまり高くないかと思われ、Rapid edemaを目にする機会というのは少ないだろうと予想します。

しかしながら、体系的に浮腫を勉強する中で必要な知識ですので、あえて紹介させていただきました。

実臨床と教科書的な知識に乖離があることはこれに限ったことではありませんが、どちらが良い悪いということではありません。

両方学んだうえで、目の前の症例に対して1つずつ自分で評価することが求められます。

次回以降の記事では、より実臨床に即した評価方法を説明します。

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