栄養②~水分補給の際は塩分も…それはなぜ?~

栄養
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ぱいせん
ぱいせん

ヒトが塩分を摂取する理由は何でしょう?

新人
新人

塩分ある方がご飯美味しいからね!後は、、熱中症予防には水だけじゃなくて塩分もって言うような。

3年目
3年目

輸液の記事の、生食は外液補充に使われるって話も関係ありますかね?

ぱいせん
ぱいせん

二人とも鋭いですね!詳しく見てみましょう

体の中での塩分の役割

ヒトが塩分を摂取する主な理由は、細胞外液量を保ち、血管内脱水を防ぐためです。塩分(NaCl)は水中ではNaイオンとClイオンに電離して存在し、体内に吸収されます。

人体の水分分布は以下のようになっており、Naが血漿浸透圧を保って細胞外液量を規定しています。Naが不足すると血漿浸透圧が弱まり、血管内の水分が不足します。その結果、酸素や栄養の運搬の機能が弱まって、最悪の場合は生命に関わります。

Naは体液平衡以外にも神経インパルスの伝導、筋収縮において重要な役割を示します。体容積に占める割合は0.2%と微量ですが、人体に無くてはならないものです。

Clも細胞外に存在する主要な陰イオンとして電解質輸送などに関わっており重要です。

汗で失われる塩分

身近な例でいうと、我々は日常的に汗をかいています。平均気温29℃、体重65kgの人で仮に考えると、室内に1日いるだけで3Lの汗をかくとされています。

運動しなくてもそれなりに汗をかくのだなということが分かります。さらに、汗の成分を以下に示します。

汗には水分だけでなく、塩分をはじめとした様々なミネラルが入っています。汗をかいているだけで、体の中の様々な成分が失われているわけですね。

汗を3L失うと。水分だけでなく、塩分を7g近く失うことになります。汗をかく行為は止めることができませんので、我々は水分摂取だけでなく、塩分をとるということも同じくらい重要ということになります。

経口補水液を美味しく感じるのは脱水のサイン?

我々が日常的に摂取する飲料水のNa量を以下に示しました。

一般的にスポーツドリンクとして有名なものも含んでいますが、一般的に用いられる輸液と比べてNa量が少ないことが分かります。

特にアクエリアスに関しては1L飲んだとしてもNaは17mEqしか含有されていません、「塩分1g=Na 17mEq」ですので、塩分に換算すると1gですね。

そこでNa補充に有用なのが経口補水液です。経口補水液は様々なものが発売されていますが、オーエスワンを例に説明します。こちらはNaを50mEq/L含んでおり、それなりの電解質濃度であることが分かります。

スポーツドリンクと比較すると、糖分が少なく、電解質が多くなっているのが経口補水液の特徴です。多くの人はおいしくないと言います。

不思議なことに、脱水患者さんは経口補水液をおいしく感じるそうです。

基本的な経口補水液の使用法としては、①飲みたくなくなるまで飲む、②飲みたくなくなったら無理に飲まなくて良い、この2点を指導してあげると良いかと思います。

補足ですが、オーエスワン500mL1本は電解質としてNa 25mEq (塩分1.46g)、K 10mEqを含んでいます。身近な食物で例えると上図と同じくらいの量になります。覚える必要はありませんが、イメージできると指導にも役立つかと思います。

Naの吸収には糖分も必要

通常塩分を口から取る場合、恐らく糖分も一緒に摂取しているかと思います。実はこの点はNaの吸収に重要です。

腸管にはSGLT(Sodium Glucose co Transporter)1受容体が存在しており、その名の通りNaと糖質を共輸送しています。

つまりNaが吸収されるためには塩分の摂取だけでは不十分で、糖分も同時に摂取する必要があるというわけです。経口補水液には少ないながらも糖質が含まれていますので、この点もクリアしているわけですね。

ちなみに腎臓に存在するのはSGLT2受容体です。これは心不全や糖尿病治療薬のターゲットとしてよく知られているところかと思います。

点滴(補液)と経口摂取(経口補水液)の違い

補液はSGLT1受容体を介さず直接血管内に入るのでブドウ糖は必須ではありません。経口で同等の事を行うとすると、水分、塩分に加えて糖質も必要になります。加えて、味も飲める範囲で調節する必要が出てきます。

まとめると下の図のようになります。

少しややこしいですが、この違いは認識しておいてください。

ここまで経口補水液を用いて水分と電解質の補給について説明しました。しかし、必ずしも水分と電解質の補充のために経口補水液を使用する必要はありません。要は水分、塩分、糖質の3点がそろっていればよいわけです。

(カフェインを含まない)水分と、塩分と糖質を含む食事を可能な範囲で摂取することがより生理的かと思われます。

薬剤師がこれらの栄養指導に直接関わることは少ないかもしれませんが、他職種との共通言語として、一医療従事者として知っておくべき内容かと考えています。

次回は水分・塩分摂取の取り過ぎに注意が必要な場合について解説します。

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