平均血圧が低下すると皮膚・消化管→腎臓→脳へ血流が途絶えてしまうんだね。一番大事なバイタルの血圧をクリアしたから、だいぶ勉強進んだかな??
血圧が低下すると起きる症状を知っておくことは重要だけど、実臨床では血圧が低下してから対応しているようでは遅いんだ。むしろ血圧が低下するまえに異変に気付くことが重要になるよ。今回は脈拍数について見ていこう。
【問題です】異常を早期発見するために重要なバイタルサインは何?
正解は脈拍(心拍)数です。結論から述べると、血圧が低下する前に脈拍(心拍)が早くなります。脈拍数と心拍数の違いは後々説明しますが、この記事では同じものと思ってください。
急性出血に対してバイタルサインがどのように変化するかを調べた報告があります。
表をみると、実際に血圧が低下したのはⅢ度(出血量>30%)です。この時点で既に出血が相応に進んでおり、血圧だけを見ていると変化に対応できません。
一方で、脈拍数に注目します。血圧が低下するのがⅢ度の出血に対し、Ⅱ度の出血の時点で脈拍数が増大していることがわかります。図にすると↓のような感じです。
血圧が低下する前に脈拍(心拍)数が増加します。なぜそうなるか、血圧の式から考察してみます。
血圧低下前に脈拍数が増加するのはなぜ?
血圧は↑式で表されます。心拍出量の単位はL/分で、1分間に心臓が送る血液の量です。これを分解すると、心拍数(1分間に心臓が何回収縮するか)×1回拍出量(1回の収縮で送る血液量)となります。
出血が起きているとすると、まずは1回拍出量が低下します。そのままでは血圧が低下してしまうため、交感神経が刺激され、まずは心拍数を増やしたり、末梢血管を締めることで代償します。これにより、軽度の出血では血圧が低下しません。心拍数の増加で代償しきれないほど出血が進行すると、はじめて血圧が低下します。
交換刺激症状(頻脈や末梢冷感)に注意することで、血圧低下の懸念の早期から気づくことができます。
循環不全時の血圧と脈拍数の特徴
循環不全の可能性がある方はA~Cのうちどれでしょうか。血圧と脈拍数の値のみから考えてみてください。
正解は「B」です。もともとの血圧が分からないので、血圧の値のみから循環不全を判断することは難しいです。
そこで脈拍数をみると、Bのみ脈拍数>収縮期血圧となっています。脈が速いのは明らかに異常です。何かが起こっているのではないか?とスイッチを切り替える必要があります。
Bのように、脈拍数>収縮期血圧の値となっている状態を死兆交叉と呼びます。両者の値は注意して観察する必要があるでしょう。
また、Bのバイタルにはもう1つおかしな点がありますが、何か分かりますか?
正解は「脈圧が低い」です。
脈圧は収縮期血圧と拡張期血圧の差で定義され、動脈硬化や心拍出量を反映するとされます。一般に30-50mmHgあたりが正常とされますが、動脈硬化が進んでいる高齢の方では50を超えることがしばしばあります。また、短期的な脈圧の低下は心拍出量の低下を反映します。
Bは脈圧が30でありA~Cの中で最も小さい値です。普段から脈圧が低めである可能性は否定しきれませんが、脈が速いことと合わせて考えると心拍出量が低下している可能性が高いと言えるでしょう。
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