腎機能②~腎機能評価の重要性を再認識しよう~

腎機能評価
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新人
新人

そんなの言われなくても分かるよ。過量投与防止するためでしょ?

ぱいせん
ぱいせん

それはそうだね。

この記事では実際に過量投与が起こってしまった例や肝代謝との違いも見ていこう。

腎機能評価の難しさ

例えば、体重50kgの人が体重計に乗ったとして、おそらく体重計には50kgと表示されるはずです。多少前後する可能性はありますが、測定誤差はほぼありません。

一方で、実測GFRが50mL/minの患者において、推算GFRが150mL/minと大きくずれてしまうことは臨床で往々にして起こりえます。

腎機能を過大評価すると本来減量すべき薬剤を最大量で投与してしまい、副作用につながりかねないため、注意が必要です。

腎排泄のハイリスク薬剤にDOAC(直接経口抗凝固薬)があります。その1つであるプラザキサ®(ダビガトラン)は、発売後半年で23名の患者が出血死しています。このうち7名はCCr<30mL/minであり、本来は禁忌にあたる腎機能低下があったとのことでした。

出血の原因は腎機能以外にも基礎疾患や患者背景が関与していた可能性もあり、一概に論じることは難しいのですが、少なくとも腎機能評価が甘かったという点は否定できません。

腎機能評価が難しいなら肝代謝の薬を選べばいい?

腎機能評価が難しいのであれば肝代謝の薬剤を選べばよいのではないか?と思われるかもしれません。

しかしながら、肝代謝の薬剤は一般に薬効の個人差が大きいとされています。この背景にはバイオアベイラビリティ(服用した薬剤が全身循環に到達する割合)や肝代謝能の個人差が関係しています。

例として、薬剤の代謝の関わる酵素としてシトクロム(CYP)450がありますが、このサブタイプである2C9.2C19.2D6にはPoor Metabolizer(PM)という遺伝子多型が存在しており、PMを有する患者では薬物を十分に代謝できず、血中濃度が上昇しやすいとされています。

またCa拮抗薬であるニフェジピンはPMを持たないCYP3A4で代謝されるため血中濃度の誤差が一見少ないように思えますが、実際血中濃度の個人差が最大10倍異なるとする意見もあります。

このように、肝代謝薬剤を選べば薬効が安定しているというわけでもありません。そして肝代謝能を評価して適切な投与量設計を行うことは現時点では大変困難です。

腎機能評価、難しくても必要な理由

薬物動態の復習です。薬物を体内から消失させる能力をクリアランス(CL)と呼びます。多くの薬剤は腎排泄か肝代謝により排泄を受けますので、

全身CL=腎CL+肝CL

と表現することができます。このうち肝CLの測定は一般に難しく、バルプロ酸など一部の薬剤では体重あたりのクリアランスとして表現されることがあります。

一方で腎排泄薬剤のクリアランスはクレアチニンクリアランスに相関します。腎機能評価をきちんと行うことができれば、少なくとも腎排泄型薬剤については血中濃度をある程度コントロールできうるということになります。

逆に腎機能の評価を上手く行うことができない場合、腎排泄薬剤の過量/過小投与につながる可能性があります。

腎機能評価は難しいですが、指標の意味や弱点、特徴をおさえておくことで評価の精度を上げることができます。具体的な方法については次回以降の記事で説明していきます。

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